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「空気」に流されるのか、それとも、自ら「風」を起こすのか [政治]

東京新聞 2011.12.11 朝刊28面
「戦略なき国家運営 今も 
『昭和16年夏の敗戦』著者 猪瀬直樹さんに聞く」


太平洋戦争の開戦から70年。
なぜ日本は無謀な戦争へと突入していったのでしょうか。

東京都副知事の猪瀬直樹さんは、
日本はどうあるべきかという国家戦略が欠けていた。
戦略なき国家運営の恐ろしさを歴史から学ばなければいけない

と語っています。

国家戦略は、国がどうあるべきかというビジョンや構想に基づいて作られます。

日露戦争までは、
「ロシアに勝たなければ日本の独立が危うい、この危機を乗り越えなければ」
という国家のビジョンがありました。
しかし、ロシアに勝ったあとは、国を統べるビジョンが失われ、
官僚制度の縦割りの組織がばらばらに動き出した、といいます。

国家のビジョンづくりは政治の基本です。
だからといって、ビジョンづくりを政治家や官僚に任せておけばいいと
いうものではありません。

国家のビジョンは、メディアも含め、有識者や企業経営者など、民間で
つくるもの

と猪瀬さんは主張しています。

photo001.JPG

「空気」はこわい

この記事で特に注目したのが、
総力戦研究所の存在でした。
国家総力戦の研究と人材育成のために、1940年10月に
内閣直属機関として開設された研究所です。

対米戦を遂行すると、
「緒戦は優勢ながら次第に国力の差が表れ、やがてソ連が参戦し、
3、4年で日本は必ず敗れる」
との結論を内閣に報告していました。
その内容は、戦争の経過を正しく予測していたそうです。

それにもかかわらず、日本は、「敗戦必至」の戦争へと突入していきました。
なぜでしょうか。
それは、戦争回避を言い出せない「空気」が既に醸成されていたからです。

日本は、「空気」で物事が決まってしまう、という風土があります。
国はどうあるべきかというビジョン、構想を持ち、
正確な分析に基づいて国家戦略を構築すれば、
あいまいな「空気」に支配されない、しっかりとして国家運営ができるのでしょうか?

「国家のビジョンは、メディアも含め、有識者や企業経営者など、民間でつくるもの」
という猪瀬さんの言葉をどう実践していくか。

東日本大震災が起きた2011年の年の瀬に、私たちが果たすべき役割を考えています。

2012年をどう迎えるか

東日本大震災が起きた2011年と、太平洋戦争へと突入していった1941年。
2011年12月18日に放映されたNHKスペシャル
「シリーズ原発危機 メルトダウン ~福島第一原発 あのとき何が~」
を見ると、70年の時を超えて共通する要素が浮かび上がってきます。
NHKスペシャル|シリーズ原発危機 メルトダウン ~福島第一原発 あのとき何が~
 
ドラマ仕立ての構成で、震災当時の緊迫感が伝わってきました。
すべての電源を失い、真っ暗な中で、原子炉の状況すら監視できない状態での作業は、
さぞ怖かっただろうと思います。
 
これを見ていて、戦争映画を思い浮かべました。
第二次大戦中の日本を描いたものです。
大本営からの指令の下、無謀な戦争を続けていった前線の日本兵の絶望的な戦い。
 
たぶん、現場で働いていた人は、本当に最善を尽くしたのだと思います。
あのような死と隣り合わせの場所で作業された方々には頭が下がります。
 
ただ、残念ながら、結果は最善ではありませんでした。

メルトスルーをシミュレーションしたCGをみただけでも、原発事故の恐ろしさを思いしらされましたが、一方で、日本は非常用復水器(イソコン)を使う訓練も行っていませんでした。
それどころかその機能すら理解していませんでした。
もし、イソコンを、ちゃんと使っていたなら、メルトダウンを防げた可能性があったという。
 
今になって落ち着いた所で専門家たちはいろいろと解説していますが、
東京電力も原子力行政も、ずさんで、やるべきことをやっていなかった、ということは明らかです。
全電源喪失の可能性を知っていても、それに対する対策を立てていませんでした。
安全神話は本当に恐ろしい。
 
建屋の爆発。
死と隣り合わせの作業は想像を絶するものがあります。
現場の作業員は立派だったと思います。
前線で戦っていた日本兵のように。
 
しかし、今回も負けた。
個人としてのがんばりだけでは、どうにもならないことがあります。
あの太平洋戦争にむかっていった日本のように、
原発の安全神話自体に無理があったのだと思います。
 
それを誰も声をあげずに過ごしていたのが、日本の「空気」だったのではないでしょうか。
 
2012年を迎えました。
今年も「空気」に身を任せ流されていくのか。
それとも、自ら新しい「風」を起こすのか。


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